対面

 

【対面】

 

 

どうしてちかくにみることが

顔をわからなくさせるのだろう

ひかりに疲れたそうほくのように

ほつれているさまの全体なのが

それをひらかれた憔悴へとかえて

目鼻をひとつのおとろえにゆるがす

きれいでもかなしさをつたえ

みえるかたちは痕跡にすぎない

ふくらみでもさけめでもなく

つまりはわけられる部位でもなく

集積のなかに集積がかくれるだけで

ほおやひたいがかがやくのすら

はだをもつ肉が芯をめぐりながら

顔のときのまを憂いているのだ

テーブルは顔へのまあいをつくり

ひとのおさまるその気配もしずかで

くびが顔をたてているときにも

からだからのひかりの反映が

ひとみをしろく抹消させている

きえゆくものが髪のながれにあり

顔のかこまれかたはたとうれば

じかんの箱庭を標定するだけ

ねむけをたつまばたきのもたらす

ときのきざみも顔のじかんへ

およべぬさざなみにすぎないなら

顔がなんら水面たることもなく

むしろ汲まない井戸の涸れる

不作為のふかみをしるすだけだ

顔をながめておもう、顔がないと

単一でないさまのうしなわれる

そんなおんがくてきなこと以上に

ありのままながめられてゆく

ものである顔のすずしい固着が

表情からごくわずかにくずれるのを

顔以外からのはるかさとしたのだ

おのれになにひとつ作用しない顔は

作用なき対象としてあらわれて

みずからに似ることだけをおこなう

せいよくにまとめられない感情が

つつましいおおきさでひろがっても

うしろに顔はおきざりにされる

けれどすこしずつさらにちかづき

性質がべつのなにかでまぜられると

はじめてためいきもあらわになる

きっと対面者のなにかが映ったのだ

はんぶんだけ顔から不如意がなくなり

はんぶんがうつくしかったりする

 

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