私に向かない職業

 色々再就職活動をしていたがうまく結果が出なかった3月、大学事務のお誘いがあった。さっそく派遣会社に赴いて詳細を伺ってみると、事務方と教員側との間の橋渡しをして資料を作成する仕事で、引き継ぎ無し。

 つまり、以前やっていたようなひどい目に遭う可能性があるという事だ。ちょっと躊躇したのが顔に出ていたのか、別の仕事はどうですかと5月頭までの短期コールセンター業務を紹介された。未経験ではあるが、それまでの職歴で電話応対は普通にやってきていたので大丈夫だろうと言う事であった。

 岡山にある某真剣ゼミで有名な通信教育会社の受電コールセンター勤務である。研修がちょっと厳しいですが頑張ってくださいと釘をさしてるのか励ましてるのかわからない言葉と共に○○ッセに送り込まれた。

 気張って始めたが、スーツを着るのは研修初日だけで後はオフィスカジュアルで問題ない。NGが出たスタッフもいたらしいが、そのスタッフは下駄履きだったそうでそりゃ私だってあかんわと思う。

 研修は1時から夜9時までみっちり続くが、4日間の促成栽培で大量に叩き込まれたので何がなんだかわからない。残りはOJTである。

 研修で、電話を受けるロールプレイを始めた瞬間思い出した。

 「俺、むっちゃあがり症だった! キーボードを叩く手が震えて打てない!」

 後はもう悲惨の一言。噛むわとちるわオペレーションの順番をすっとばすわ、研修が終わると疲労困憊を絵に書いたような有様だった。

 それが3月半ば。そこからは自分でイントラネットやマニュアルの資料を読み込み、フェローと呼ばれている先輩とロールプレイをしたりして実践に移る事になる。中には研修終了後3日で実践に放り込まれた悲惨な同期もいたが、彼は肝が太いタイプなので大丈夫そうではあった。

 そして一ヶ月。

 まだ研修から抜け出せず、一ヶ月の間実際の業務に就けずロールプレイと資料の読み込みを延々とつづけているド新人の私がいた。OJTで上手く対応でき、次のロールプレイで実践投入の見極めに入って良いかという滑らかな対応ができる時があれば、その次でなぜかガチガチに噛みまくってしまい見極めに落ち続けたりとダメダメな状況が続いている。

 また、教える側も教えるだけに時間を取れないので、朝一回ロールプレイをやった後は残りの8時間延々と資料を読んで終わる放置プレイな日もあった。

 何事も練習である。それも、一日一回の練習を三日で三回やるよりは、一日に三回続けてやった方が身につく度合いが違うと考えているのだが、私の場合ロールプレイの回数は多くても丸一日みっちり身体に叩き込むような事はなく、一日に一時間ぐらいロールプレイをしたらモニタリングという名前で放置されている事が同期より遥かに多かった。

 そんな事をしているうちに、同期はつぎつぎと実践に入っていく。

 この一ヶ月間、業務と呼べるものと尻で椅子を磨いている時間の割合を出したらあっとうてきに椅子を磨いていた時間の方が多かった。貯まるのは練度不足で安定しないロールプレイの採点票ばかり。

 昨日の事である。

 「普通の方は、○○は回の練習で実際の業務に就いてもらってますが、ひろぽんさんはまだ一度も実際に電話をお受けすることがないままです。業務は、研修を受けてロールプレイをする事ではなくて、実際のお客様のお電話をお受けすることです。今日はせめて一回はお客様のお電話をうけていただきます」

 かくて社内ニートの安楽な地獄から別の地獄に放り込まれた。

 いやはや、朝から退勤まで隣に指導者さんがついて(ベタ付きという)みっちり指導された。でも、こちらの方が中途半端な放置を続けられるより遥かにマシである。社内ニートの経験は以前にもあるが、これはこれで精神的に堪えるのである。

 一日みっちりやったおかげで、最後はそれなりに出来たし、手が震える事もなくなってきた。が、あがってしまう傾向は治らない。

 実際のとこ、私は酷いあがり症なんである。高校生までは赤面症かと自分でも思うくらい人前で声を出すのが苦手であったし、就職活動でも最終面接で声が半オクターブ裏返り

 「キミ、普段からそういう喋り方してるの?」

 と落とされたこともあった。

 日常業務が喋ることならいいトレーニングになるに違いないと前向きにとらえていたが、持って生まれた性質はなかなか変えられないようである。

 次の仕事ではコールセンターはお断りすることにしよう。

 だんだん出来ることが少なくなってきているようなここんとこ一ヶ月の話。

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