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雪解け蛍

買いだめしてたかなしみの洗浄液は

あんまり効かなくなって流してしまった

どうにもならない感情に対処するには

月日はまだ成熟していなかったのだろうか

煮え切らない生返事も調理できずにいる

お月さまを目玉焼きに見立てて食べられたら

なんて思っているうちに食べられてしまう

ねむりの世界へようこそ

場面が変わるとちょっと安心できるから

似ている場面を繋ぎ合わせたりしている

重ね合わせておもかげを育てていくつもり

冬にそなえてあんなに備蓄していたかなしみも

どうにかこうにか流してしまったみたい

隙間ができたら戸惑いながらも喜びの種子を

とぼけて忘れたふりして据え付けておいたら

うっかりこぼしたように振りまいておけたら

どんな形であれ咲いていく表情が見れるかな

ちらかったつらかった重しをふりほどくように

身をよじってぴょんぴょん跳びはねていた

体重計にのっては実態のない幽霊の数値を見る

呪縛しながら守護してくれているだろう存在を

背中の中ですべてをゆだねながらも振りほどく

だいじなものほど欠落していくけど揺り動かして

おっことしたらおちぶれたら大事なきもち育つ

だめなもの可愛いけどだめになるわけじゃない

進んだり立ち止まったり舞い戻ってみたりを

吟味していくようでむなしく漂白されていたい

食い散らかされたお菓子を巣穴に持ち帰る蟻が

耳の穴から侵入してぼくの中身を見てみておくれ

ただの暗闇なのか見えない迷宮どんな居心地なのか

仲間が住み着いて行ったり来たりしたらくすぐったい

往来の絶えないひとつの道になりたいだけなのに

細くなってついえてしまうのってやりがい感じる

どんなふうに先細る命を繋げて導けるかなんて

ぜんぜん見当もつかなくてやけくそになりそうだよ

いつか咲く花をぼんやりと想って過ごしていた

あなたの遠い輪郭はわずかに光ってうれしかった